プログラム
*印は招待講演
9月7日(月)
13:30〜14:30
松本拓也*(福井大)
A Geometric Theory of Rigid Body Rotation — We All Live in the Hopf Fibration —
「ものが回る」という現象は、身近であると同時に、自然界に普遍的に現れる基本的な物理現象である。本講演では、固定された円盤の周りを別の円盤が滑ることなく回転する、という単純な力学模型から出発し、運動する円盤の回転角について考察する。
この模型における全回転角は、円盤自身の回転に由来する「動的位相」と、円盤の空間的な運動の軌道によって定まる「幾何学的位相」とに分解される。後者は、回転円盤に固定された単位法線ベクトルの軌跡を2次元球面上の曲線として捉えることにより、球面上の幾何学と結び付けることができる。さらに、ファイバー束の言葉を用いると、幾何学的位相はホップ束のホロノミーに基づいて記述される。
このような観点から見ると、本模型は、Diracのモノポール・ポテンシャル、Berry位相、フーコー振り子など、幾何学的位相が現れる典型的な物理系と共通の幾何学的構造をもつことが分かる。
講演の後半では、特定の円盤模型を離れ、古典力学における剛体固定基底の回転をホップ束の枠組みで記述する、より一般的な幾何学的理論の構築に向けた試みを紹介する。
本講演は、arXiv:2505.16749(髙田宗樹氏(福井大),保倉理美氏(福井大)との共同研究),および arXiv:2512.04481
に基づく。
14:30〜15:00
松浦壮(慶應大)
グラフ上のユニタリー行列模型の双対性とスペクトル曲線について
***ここに概要を書く***
15:20〜16:20
田中豪太*(明治学院大)
エンタングルメントネガティビティのテンソルくりこみ群計算
エンタングルメントネガティビティは量子もつれを表す指標の一つであり、混合状態における量子もつれを古典的な相関と区別して捉えられる点に特徴がある。この性質を利用し、有限温度相転移の解析への応用も期待されている。様々な数値解析手法が提案されているが、本講演ではテンソルネットワーク法の一種であるテンソルくりこみ群法による計算について議論する。1次元量子イジング模型のゼロ温度極限におけるテンソルくりこみ群計算の結果を報告する。
16:30〜17:00
金森逸作(理研)
変形された Domain-wall 演算子について
カイラル対称性のよい格子フェルミオンにMoebius型のDomain-wallフェルミオンがある。
Domain-wallフェルミオンのDirac演算子は5次元に拡張した空間で定義されるが、
4次元でのスペクトラムを変えずにこれを変形した演算子がH.Neffによって提唱されている。
この変形された演算子の性質やシミュレーションへの応用について議論したい。
9月8日(火曜)
AdS/CFT 対応は、AdS 重力理論に対して等価な CFT が存在することを主張する。
では、CFT に環境となる場の量子論を結合したとき、AdS 重力の力学はどのよう
に変更されるだろうか。本講演ではまず、通常の AdS/CFT 辞書を出発点として、
開放系の AdS/CFT を扱う処方箋を導出する。次に、この処方箋が Markov 極限
で Lindblad 型の力学に帰着することを示し、その場合について、処方箋が実際
に機能することを確認する。さらに、「開放量子系の不可逆的な時間発展に伴っ
て、重力側には事象の地平面が現れる」という予想を提案し、その一歩目の検証
として、2 次元重力模型(JT 重力)における数値的な結果を紹介する。本講演
は arXiv:2504.17320 および arXiv:2605.14573 に基づく。
13:30〜14:30
青木保道*(理研)
「富岳NEXT」- アプリケーション・コデザイン
概要
「富岳」の次の世代のフラッグシップスーパーコンピュータ「富岳NEXT」(仮称)はAI-HPCマシンとして2030年度稼働を目指した開発が進められている。その現状と、その上で走るアプリケーションとの「協調設計」について報告する。
「南部力学」とは南部陽一郎が1973年に提唱した一般化されたハミルトン力学である.
本講演の第1部ではまず南部力学とはどういうものか予備知識を仮定しない初等的な立場から
解説する.続いて第2部では南部力学を「統計場の理論」として新たに定式化し直した後,
従来まで南部力学の困難の一つであった自己相互作用を導入して南部力学の拡張を行う.
さらにその応用として平衡状態への緩和力学過程を詳細に考究する.時間が許せば,
量子化の問題などの未解決問題についても論ずる.
16:30〜17:30
西垣真祐(島根大)
ヤコビ型ランダム行列の固有値比分布とカイラル対称性
ランダム行列理論におけるヤノシー密度を偏微分方程式系の解として導出する手法を用いて, ヤコビ型ユニタリーアンサンブルにおける最小の2つの固有位相の比r=θ_1/θ_2の確率密度関数P(r)を計算した。ラージN極限におけるP(r)の普遍的結果に対する主要な補正項がO(1/N^4)であり, ヤコビカーネルの低次(O(1/N^{1,2,3}))補正項の寄与が非自明に相殺されていることを発見した. この知見は, カイラル対称性を持つ量子カオス系のフロケ演算子のスペクトルから, 系固有の精緻な有限サイズ補正を抽出できる可能性を示唆している.
9月9日(水曜)
9:30〜11:00
中山勝政*(理研)
高次元高自由度系におけるテンソル繰り込み群計算
概要
本講演では、テンソルネットワーク法の一種であるテンソル繰り込み群計算のゲージ変数への適用可能性についての研究について発表する。乱数を用いたサンプリングを基本とする手法は4次元においては成功を収め、三次元においては部分的な成功を収めたものの、高次元や弱結合領域では難しいことが知られている。この難しさを、サンプリング手法や計算時の誤差低減手法を用いて改善することで、3-4次元時空においてSU(N)純ゲージ理論に対しての適用可能性を議論し、内部エネルギーなどの物理量を計算できることを示す。
11:15〜11:45
Man-Hin Ma(京都大)
Emergent spacetime in QG analogue of randomly connected tensor network
Understanding how classical space-time emerges from microscopic quantum DoF remains one of central problems in QG. Randomly Connected Tensor Networks(RCTN) provide an intriguing framework in which continuous geometry arises from purely discrete tensor networks without assuming any background manifold.
In this talk, i will introduce a QG analogue of RCTN based on an interacting bosonic many-body system governed by a cubic Hamiltonian. By imposing a constraint: Wheeler-DeWitt equation, we identify the physical Hilbert space of the model and investigate its correlation functions. Different symmetry patterns imposed on the coupling tensor lead to qualitatively different emergent geometries from nothing to fluctuating. These results suggest that symmetry plays a crucial role in determining macroscopic space-time properties and provide a possible route toward understanding emergent geometry from quantum dynamics.
13:30〜15:00
藤堂眞治*(東京大)
量子多体系計算のためのテンソルネットワーク:量子計算から機械学習まで
量子多体系の状態空間は系のサイズとともに指数関数的に増大し、その数値計算には本質的な困難が伴う。一方、物理的に現れる状態や、古典統計模型や格子場理論の分配関数を構成する局所的な重みには、エンタングルメントや局所性に由来する構造があり、テンソルネットワークはそれらを効率よく表現・計算するための強力な枠組みを与える。本講演では、行列積状態やテンソル繰り込み群などの基本的な考え方から出発し、量子多体系および古典統計系に対するテンソルネットワーク法を概観する。特に、テンソルネットワークの「縮約」とモンテカルロ法などの「サンプリング」という二つの計算戦略、および両者を組み合わせた手法について解説する。さらに、量子回路をテンソルネットワークとして捉えることによる量子計算の古典シミュレーションや量子・古典ハイブリッド計算について述べる。また、テンソルネットワークを高次元関数や確率分布の表現として利用する機械学習・生成モデルへの展開を紹介する。これらを通して、量子多体系、統計力学、量子計算、機械学習を結ぶ共通言語としてのテンソルネットワークの役割と今後の可能性を議論する。
15:20〜16:20
福間将文(京都大)
世界体積ハイブリッドモンテカルロ法の最近の進展と今後の展望
概要
「世界体積ハイブリッドモンテカルロ法」(WV-HMC法)は、数値的符号問題の解
決に向けて提唱された手法の一つであるが、その汎用性と高信頼性が特長となっ
ている。実際、連続変数の経路積分として定式化されている系に対しては原理
的にいつでも適用可能であり、また、従来のLefschetz thimble法に内在する
エルゴード性の問題を低コストで回避している。本講演では、WV-HMC法の基礎
とこれまでの代表的適用例について解説した後、最近の進展、とくに複素作用
を持つ格子ゲージ理論への最新の適用結果を報告する。
ランダム行列の固有値分布関数は様々なlargeN普遍性を持つことが知られており,そのことがランダム行列の応用範囲の広さを支えている.テンソルの固有値は近代的な概念であり,ガラスの物理,情報理論,機械学習などへの応用を持ち,ランダムテンソルの持つ普遍性を明らかにすることも重要である.最近,場の理論を使うことによりランダムテンソルの固有値分布が広範囲に調べられ,その普遍性が明らかになりつつある.その現状を報告する.
2次元因果的動的単体分割に関する進展について議論する。
9月10日(木曜)
9:30〜10:30
土屋麻人(静岡大)
球面上の最低ランダウ準位による3次元共形場理論の構築と行列ベクトル模型
概要
近年物性物理の分野で、球面上の最低ランダウ準位を用いて
3次元共形場理論を構築する研究が進展している。
本講演では、この進展について紹介し、
その普遍性と行列ベクトル模型との対応について議論する。
量子実時間発展を長時間かつ大規模系に対して計算する新しい枠組みを用いて、
量子力学における観測問題を議論する。具体的には、調和振動子を対象系とし、
これにvon Neumann型の観測装置と、Caldeira-Leggett型の環境を結合させた
全体系のユニタリ時間発展を数値的に計算する。高温多自由度の環境をトレースアウト
して得られる縮約密度行列から、デコヒーレンスの効果をとらえ、対象系と
観測装置の組に対して、確率的な分岐が生じることを確認する。また、対象系
と観測装置との相関を計算することにより、理想的な観測が可能となる条件を
明らかにする。
13:30〜15:00
川合光*(大阪公大/National Sun Yat-sen Univ.)
素粒子の標準模型は、プランクスケールまで大きな修正を必要とせず成立しているようにみえる。
一方、プランクスケール以上で重要となる重力も取り入れようとすると、弦理論が唯一の可能性で
あると思われる。しかしながら、弦理論から物理的な予言を引き出すためには、非摂動的な定式化
が不可欠である。その有力な候補が行列模型であるが、ここでは、時空と標準模型が行列模型から
どのように現れるかについて論じる。
15:30〜17:00
長谷部一気*(仙台高専)
Emergent Quantum Matrix Geometry: matrix first or state first?
通常、量子物理では背景幾何を固定した上でハミルトニアンを構築し、そこから固有状態として量子状態を導入する。同様に、IKKT行列模型においても、行列作用を出発点として時空の導出に成功した後は、時空の揺らぎとして物質場や重力場を構築し、その量子状態を実現することが目指される。
本講演では、この流れを逆転させたスキームについて紹介する。すなわち、行列をあらかじめ仮定することなく、量子状態を起点として行列および幾何学を創発させるアプローチを考える。この「量子状態から創発する行列幾何(Emergent Quantum Matrix Geometry)」について、主として概念的側面に焦点を当てたレビューを行う。また、最近興味を持っている量子幾何におけるHowe双対性の存在と、その帰結についても議論する。
9月11日(金曜)
9:30〜11:00
村山祐明*(筑波大)
BFSS行列模型の局所化手法による三点振幅の厳密計算
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CEO位相的漸化式は、行列模型のSchwinger–Dyson方程式を起源とし、スペクトル曲線から高種数の相関関数を再帰的に構成する普遍的な枠組みである。本講演では、2次元dynamical triangulationに対する石橋–川合の弦の場の理論を出発点として、そのHamiltonianから得られるSchwinger–Dyson方程式がCEO位相的漸化式に帰着することを説明する。さらに、この対応を逆向きに捉え、スペクトル曲線のデータから弦の場の理論のHamiltonianを再構成する逆問題を考察する。自由場表示されたW3生成子を用いることで、DT・CDT、minimal string、JT gravityなどを統一的に扱う構成を示し、さらに4次元N=2超対称ゲージ理論のSeiberg–Witten曲線への応用を紹介する。これにより、位相的漸化式の背後にあるHamiltonian的構造と、その2次元量子重力を越えた展開について議論する。
13:10〜13:40
佐古彰史(東京理科大)
代数多様体の行列正則化 ~ファジー7次元球面の構成とその一般化~
Lie-Poisson algebraの作用の下で不変な対称性をもつ空間,特にコンパクトな半単純リー群の不変多項式で定義される代数多様体の量子化を行う.
そのような空間の量子化として,近年開発されたLie-Poisson代数の可約表現を用いた行列正則化を用い,代数多様体を余随伴軌道の葉層構造を用いて量子化する.
特に具体例としてfuzzy $S^7$について詳しく議論する.
Lie代数を解に持つ行列模型の古典解のLarge N極限を,幾何学とあるいは古典力学的と対応付けるものを与えている.
13:50〜14:50
河本昇(北海道大)
Exact Lattice super Y-M の新しいアルジェブラと時空構造
***ここに概要を書く***